帝王切開の一部始終。手術中は寝ているだけではなかった。
心も体も、準備が整った状態で挑む予定帝王切開。
帝王切開での出産は、特別なことではないそうです。たくさんの人が経験してるんだから大丈夫。手術中は寝ているだけと思っていましたが、そうはいきませんでした。
想定外の出来事が次々と起こり、妊婦の情緒不安定さに拍車をかけてきました。
今回は、手術の一部始終を記事にしたいと思います。あくまで私の体験談となります。病院選びや手術前の方の参考になればと思います。
手術前
手術室に入る数十分前に、腰椎麻酔を打つ箇所に医師により麻酔のシールが貼られました。背中に麻酔を打つときに、痛みを感じないようにするためです。
そして、本番の時にスムーズに打てるよう、腰椎麻酔を打つための姿勢を練習します。横向きになり、膝をくの字にして腕で抱え、できるだけ腰を丸めます。
お腹が出ている状態でのこの姿勢はキツイと思いましたが、注射を打ってもらう時間くらいなら大丈夫と思いました。
できれば被りたくないマッシュルーム帽子で髪の毛をしまい、手術着に着替えます。
夫、実母、義母に見送られ、スタッフの方と病室を出ました。表面上は元気に振舞っていますが内心はとても不安です。一緒に手術室に入るこの白衣の天使だけが、頼りです。
手術室に入る
歩いて手術室へ入ると、数名のスタッフさんが準備をしていました。
BGMはオルゴール。
そういえば昨日、手術中にかけたい音楽があればCDあればかけられますよと言われたことを思い出しました。
・・・入院日に言うことかね?('Д') ハワイのCDでも持ってきたら緊張がほぐれたかも。次回があればそうしようかな。
白衣の天使の指示に従い、手術着を脱いで全裸。
知らない人が何人もいる中での真っ裸は、違和感しか感じません。なんて非現実的。
手術台へ自力で上がります。
そして尿管を通されます。この尿管通しは、口コミでとても痛いと知っていたので覚悟はしていました。「力抜いてね~」と言われ、体の力を抜くと・・・
一瞬の痛みでした。
「あら上手ーーー!」と褒めてもらいました。笑
マタニティヨガで練習していた力の抜き方です。口から「はぁーーー」と息を吐きます。
帝王切開が決まったときは、マタニティヨガなんて無駄だったと思いましたが役に立ってよかったです。
腰椎麻酔を打つ
ここからだんだん私の元気がなくなっていきました。
練習した姿勢になり、白衣の天使にがっちり姿勢を固定されました。練習したときよりも苦しい。
キノコ帽子をかぶり、妊娠線のたくさん入った大きなお腹で全裸で横になり小さく丸まっている自分を数人に見つめられている。股からは尿管出てるし。なんて私は哀れな姿をしているのだろうと思いました。まるで映画で見る何かの実験のようです。
注射の痛みはなかったのですが普通の注射とは違い、1分以上はかかったと思います。まだ?まだ?まだ終わらないの?この姿勢息がしづらいわ。。この過程を数々の妊婦さんが経験しているのだと思うと、本当に尊敬します。
やっと終わったと思ったら、次は右腕に注射が打たれました。
お腹の中をゴソゴソするときに気持ち悪くなる人がいる為、その予防の注射ですとのこと。しかしこの注射は、喉が渇きやすくなるとのことです。
手術スタート
いろいろ体にセットされ、手術が始まります。ここでようやく裸体ではなくなりますが、いよいよ始まる緊張が高まります。
最初のパニックです。始まると言われたあとに目に布を当てられ、目隠しをされました。事前の説明の中では言われていませんでした。
今までしてもらった準備は、全て目であちこち見て自分を安心させていたのに、これでは何も確認できません。
先生やスタッフさんたちの様子を見ていることで安心したいのです。
思わず「えっ目隠しするんですか?」と言いましたが、「そうですよー」と答え。
突然のことだったので目隠し止めてくださいとは言えず、暗闇。
2回目のパニックです。酸素チューブが入っていた鼻がなぜか詰まり、鼻呼吸ができなくなりました。想像してみてください。暗闇で身動きできない状態のときに鼻呼吸できない状況を。
事前に、「手術中に感じたことは、どんなことでもいいから口に出して教えて欲しい」と言われていたことを思い出しました。
「鼻で息できません」と言うと、医師に「口で呼吸すればいいよ」と言われました。
口での呼吸を始めましたが、すぐに喉の渇きを感じました。口の中から喉の奥までカラカラに乾いてきました。
反射的に、ツバを何度も飲み込んで潤そうとしました。が、追いつきません。ツバでは足りません。
しかし、繰り返しツバを飲み込んでいると、口呼吸ができず苦しい。
これまで感じたことのない渇きです。
術前に打った注射のせいで余計に乾くのだと思います。
暗闇の中、「喉がカラカラです」と言いました。
湿らせたガーゼで口の中を拭いてもらいましたが、口の中が湿っただけで喉の渇きはそのまま。
必死で口の中の水分を喉奥へ飲み込みますが、口の中はすぐにまた渇いてきます。
また「喉が渇きます」と言いました。
またガーゼを入れてもらいましたが同じこと。
普段は鼻呼吸で過ごしますよね。
口から喉がカラカラに渇くのを我慢しながら意識的に口呼吸を続けることの難しさ。不快。辛い。
暗闇で、一人で戦いです。
帝王切開でまさか喉の渇きと戦うことになるとは。
今は意識的に口呼吸ができているけれど(必死)、赤ちゃんが取り出されたあとは全身麻酔になるので、意識がなくなったら呼吸が止まってこのまま死ぬんじゃないか。
と本気で死を考えました。
途中、医師から「寝てていいよ~」と言われましたが、私はこの状況での眠り方が分かりません。
赤ちゃんの誕生
赤ちゃんの誕生です。目隠しが外されました。紫色の小人が出てきました。
あらこんにちは。あなたがお腹に入っていたのね。
私の顔の横に置かれ、記念撮影です。あとで写真を確認しましたが、私ちゃんと笑えてました。
母の話によると、私が手術室に入ってから産声が聞こえてきたのは10分くらいだったそうです。
あまりにすぐで驚いたと。
私が苦しんでいたのは10分未満と言うことになりますが、とても長い時間に感じられました。
赤ちゃんの処置の様子をモニターで見せてもらいましたが、私はとても疲れていたのでただぼーっとモニターを見つめているだけでした。
そして縫合に入るため、全身麻酔へ。
全身麻酔ってこんな感じ
全身麻酔をされました。内心、口呼吸ができなくなると死ぬほど心配している状態のまま。
一瞬で効果てきめん。
視界があっと言う間に白いぐるぐるで覆われていき、穴の中へ落ちていく感覚でした。
アリスが不思議の世界に行くときみたいなぐるぐるの映像。
それからは幾何学模様の連続。
しかも高速で目の前を流れていきます。
あるときは真っ白な世界でレインボーのジェットコースターに乗っている高速移動の光景でした。
麻酔の世界って、パティスリーサダハルアオキのレインボーのチョコみたいは配色なんだよって夫にあとで教えてあげようって思いました。
幾何学模様のあとは現実世界にいる意識がなくなり、夢の世界が現実世界になっていました。
そんな中でも、固定された両手を握ってくれている白衣の天使・助産師さんの手の感触と、自分の喉がカラッカラでも口呼吸ができていることは薄っすら分かっていました。
あとから思えば、手の感触がなければこちらの世界と完全に切り離されてしまっていたんじゃないかと怖くなりました。
意識と体が強制的に離される感覚は、とても気持ち悪かったです。
現実世界に戻ってきた
目が覚めると、手術室から医師は退出しており女性のみになっていました。
私は手術台の上にいました。まだ意識ははっきりしていませんが、「あ、こっちが本当の世界だっけ」と思いました。
すると何やら私が持ってきたマタニティパジャマのことで揉めています。
パフスリーブのゴムの位置が点滴を刺している箇所と重なってしまうためこれは使えないと言っています。
「他のは?」
「あの子他に普通のパジャマ一着しか持ってきてないじゃないっ!」
と言うなんとも申し訳ないやりとりがされ、産院の服を着せてもらいました。
きれいになった赤ちゃんが横に置かれ、もう一度記念撮影。
赤ちゃんからはどこからともなく「きゅるきゅる」とかわいい音が聞こえてきました。
とっても小さくて、とってもあったかい。
でもこの時に撮影した写真の私は、ひどい顔をしていました。必死でやったピースサインは指折れてたし、目も開いてなくグッタリした表情。
私は長い長い旅から帰ってきたかのような感覚でとても疲れており、また目を閉じました。
気が付くと病室のベッドへ6人がかりくらいで移されるところでした。
四方八方におばちゃんたちの顔が見えます。「せーの」の掛け声と共に担架からベッドへ。これは、ドラマで見たことある光景!
室内は暗くされ、夫と実母と義母が入ってきました。
「赤ちゃん、とっても元気だよ!」と夫が声を掛けてくれたけど、私はそれよりも、自分の喉がずっと極限状態にカラッカラであったことを真っ先に伝えて分かってもらいたかったです。しかも、わけのわからない長い夢から覚めたばかりで、心も疲れきっていました。
でも声なんて出ません。「喉がカラカラ」と言ったつもりでしたが、聞き取れないみたいです。
腰から下は動きませんでした。
ガチガチに何かで固定されている。
鉄製のコルセットがはめられているんだと思いました。でもそれは実際そうじゃなくて、麻酔のせいでした。
家族の面会
数時間後に親族が来てくれましたが、病室に入ってきたのは実の家族のみです。
父は私の弱々しい姿を見て泣いていました。
夫の家族は気を使い、入室を遠慮してくれたみたいです。まともに応対できる状態ではないけど、私は入ってきてくれたらいいのにと思いました。赤ちゃんだけ見れればいいのかな、と卑屈に考えてしまいます。
私の病室は手術する患者用の部屋だったのでナースステーションのすぐそばにあり、新生児室はその横です。
夫や実家の家族、義実家の家族がみんなで赤ちゃんを見てやんややんやと楽しそうにしている声がドア越しに聞こえてきました。
真っ暗で孤独に戦った私にはその声は辛いものでした。
私が産んだのに、私は暗い病室で一人でした。赤ちゃんを皆が見に来てくれて嬉しいなんて思う余裕はなく。
手術中に何があって、どれくらい辛かったのかを早く夫に話して分かって欲しかったけれど、それは何時間もあとになりました。
最悪な夜
後陣痛と言うものでしょうか。
時々、子宮が上に引っ張られて剥がされそうなギューッって感覚がありました。
初産ということもあり、これは全然耐えられるものでした。
その夜を最悪にしたのは、
病院のリクライニングベッドが固すぎることと、鎮痛剤が点滴で、眠くなる薬だったことです。
当然ながら、動けません。
ですがベッドが固いので背中や腰が痛くなります。
夜勤の看護師の方にクッションを支えにして体を横向きにしてもらったりしていたのですが、また痛くなるの繰り返しでした。
あまりに寝心地の悪いベッドです。
これが数時間続きました。自分で寝返りできないのはとても辛く、体の不自由な人の大変さを考えました。
室内は暗くなっていましたが、ベッドの上にあるランプが眩しいことが気になっていました。けれど数十分間おきに看護師の方が様子を見にこられるため、うとうとしても眠ることができませんでした。
手術から時間が経ち、鎮痛剤が打てるようになりました。
ジンジンと痛みはあったけど、麻酔のせいかどこが痛いのかハッキリとは感覚的に分かりませんでした。ですが痛いので、鎮痛剤を打ってもらうことにしました。
私は注射だと思い込んでいましたが、それは点滴でした。
点滴には苦い思い出があるので嫌でしたが、痛みがなくなるなら仕方がない。
点滴をセットされたその直後、
「これ入れると眠くなりますからね~」と言
われました。
麻酔で悪夢を見たので、強制的に眠らせられることに恐怖を感じていた私は一瞬で後悔し、怖くなりました。
体の力が抜かれ、顔の筋肉からも力が抜け垂れ下がるのを感じ、口、目と順番にチャックを閉められたようにピッピッと閉じていきます。
まるで体が強制的にシャットダウンされていくようです。ですが、私はまだ起きています。
意識が起きているのに体は意に反し眠ろうとします。この感覚が怖くてたまりませんでした。助けてと言いたいけど口が動かない。また悪夢を見るに違いない。
案の定、今度は白い世界で、時計の振り子の両側にピンク色の頭蓋骨の重なりが永遠に続いており、ゆっくりと揺れていました。
眠りたくないと思い目を開けると現実世界が。でも重たい目はすぐに閉じてしまう。
目を閉じると普段は真っ暗なのに、変な模様が見えるばかり。
私は眠り方がわからなくなってしまった。
普通に寝るってどんな風にするんだっけ?もう一生眠れないのだろうか?
おかしな映像をずっと見ていながら、腰の辺りにジンジン痛みを感じている。
鎮痛剤は嘘?ただ眠らせるだけの薬だったのでしょうか?
端から見れば眠っているように見えるが、意識は起きていてずっとわけのわからない映像を見ていました。
翌朝、ロキソニンを飲んで2時間後くらいに痛みを感じなくなりました。
そして、ようやく眠りにつきました。
帝王切開をした夜は眠れないものだと、初めから分かっていたらよかったと思います。
おわりに
長くなってしまいました。
できればもう2度と経験したくありません。ですが、考えれば予防策もありそうです。
手術中の鼻詰まりの原因ですが、手術に立ち会ったスタッフの方に翌日聞いてみたところ、
「花粉症で少し鼻が詰まっていると、多すぎる酸素のせいで詰まってしまった可能性がある。最初からマスクにしていたら詰まらなかったかもしれない」とのことでした。
喉の乾きを抑えるためには、もっと積極的に湿ったガーゼを入れてもらうように頼めばよかったと思いました。
もしくは最初からマスクにして、喉が渇く注射を打っていることもあるし、加湿機能付きのマスクがあったらと思います。
そして全身麻酔は不要。縫合中も私は起きていたい。なんなら先生たちの手術中の雑談に混ぜてくれ!麻酔による悪夢で心を消耗したくないのです。
それと目隠しは絶対にやめてほしい。
あとリクライニングベッドは柔らかいベッドでお願いします!
このくらいでしょうか。私は骨盤が狭いことが原因で帝王切開になっているので、第2子を希望した場合は確実に帝王切開になります。相談の上、上記の希望をなるべくを叶えてくれる病院にお世話になりたいです。
帝王切開をする前はネットの体験談を調べたつもりでしたが、どうしても術後の痛みについてのことに目がいってしまっていました。しかも自分を安心させたいがために、いい体験談ばかりをインプットしてしまっていたと思います。事前にもっと手術のことについて調べておけばよかったと後悔しました。